フラーゼ(2022/11/05の語り)

……フラーゼは、自分の性について幼い頃から違和を感じているようだ。

現代では、いわゆる男性と女性以外にも性のカテゴリーが認知されるようになってきたが、ユアートにはまだ、男性と女性という性別しかないと考えられているだろう。

フラーゼが困っているのはそれだ。女性として生まれてきたが、フラーゼは〝女性らしい〟ことをするのを嫌がった。自分は〝男性〟だと思っていた。


……これは少しフェイマの話にはなるが、フラーゼはあることをきっかけに、母親のフェイマに、自分の性について否定されてしまったと思ってしまった。

フェイマが亡くなってしまうまで、そのことでずっとフラーゼは苦しんできた。……否定されたことがとても悲しかった。

実際はフェイマは、否定したわけではなかった。上手く言葉で気持ちを伝えられないフェイマは、あのときフラーゼに手をあげることしかできなかった。……〝分からない〟ということが、怖かっただけなんだ。

〝分からない〟が怖い。分かってあげられないことが悲しい。フラーゼに手をあげてしまった自分がとても愚かで、心が痛い。……きっとフラーゼの心はもっと痛いのに、って。

フラーゼに謝りたくても、聞く耳を持ってくれない、避けられている。でも、それで悩んでいることを夫・カウラスに言うこともできない、カウラスはとても心配するだろうし、困らせてしまうだろうから。

……だから、言えなかった。「ごめんね」も「助けて」も……。ひとりで不安や罪悪感と闘い続けて、募るばかりの不安に押し殺されて……ひとり、命を絶ってしまった。


……これは、フェイマが亡くなってからのお話。

成長するにつれて分かってきたのは、自分は男性でもないということ。

それでも、膨らんでいく胸や、月経など、自分が女性であることを知らしめられるのがつらくてたまらなかった。

でも、そんなつらい思いをしても、フラーゼは自分の気持ちを偽って女性として生きていくことにした。

髪を伸ばしてみた。スカートを履いてみた。自分のことを「僕」ではなく「私」と呼ぶようにしてみた。……父のカウラスには「もう少し愛想良くできたらなぁ……」と言われたが、性格上それだけはできなかった。

幼い頃からまあ愛想が良いわけではなかったが、フラーゼの顔はいつも笑顔ひとつなく、言葉や言い方もどこか冷たく、周りから怖いイメージを持たれ避けられがちになっていた。でも、それはフラーゼには何の影響もない。フラーゼ自身、あまり他人と関わることを好んでいなかったから。

それでも、いつも気にしていた。ちゃんと女性に見えているだろうか、と……。また、母のように誰かに否定されてしまうのではないかということに大きな不安を抱えていたからだ。

でも、それを聞けるのはカウラスだけだった。周りにはだれにも打ち明けていなかったから。フラーゼは父が嘘をつかないことはわかっていたが、それでもそれはカウラス(個人)の意見であって、カウラス以外の人たちがどう思っているかだなんて知らなかったし、聞くのも怖かった。

そんな時、渋々ながらも一人以上雇わないといけないことになって(やはりあの部署をフラーゼ一人でこなすのは無理があったため)、何人か雇ってみたものの考え方が合わなくてまたもや解雇してしまい……呆れかえっていたところ、何人目かで雇ったのがアルトゥムだった。

もう、面接なんてひどいものだった。名前が言えるなら問題ないとか言って、半ば諦めているようないい加減な態度のようだったかもしれない。でもまあ「半ば」ではある、今回もどうせダメかもしれないと思っていたが、誰かを継続的に雇わないと理事(※カウラス)がうるさいのだ。

アルトゥムの事情は事前に何となく聞いていたので、仕事に支障がなければ問題ないだろうとは思っていた。……この辺りは少し長くなりそうなので省かせてもらう。

簡単に言うと、アルトゥムの体質的問題は仕事に支障をきたすレベルではあったものの、それ以上に仕事ができる人だったし、フラーゼ自身も最初から期待していなかったのでここまでできるなんて思っておらず、理事の思惑どおり「フラーゼに少し余裕ができるくらい」の仕事を任せられるようになった。

さて、「余裕」と「部下」ができたフラーゼ。ほんとは職場で仕事以外の話をするのは好きではなかったが、アルトゥムもまた冗談が通じないほどには誠実で素直な人であるため、フラーゼは心を開き始めていた。すると、いつも「私」を使っているのに、たまに素が出てしまい「僕」と言ってしまうようになってしまったり、表情が和らいでいたりもしていた。

……と、私はここまで書いたまま下書きで保存してしまっていたのだが、何を書きたかったのか全く思い出せないので、ここまでにしておく……スンマセン。

多分、フラーゼがアルトゥムにこのことを打ち明けるかみたいな話だとは思うけど、ここはまだ不確定要素もあるから、またいつか、ね……。

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